台所と暮らしのあわいを、時系列で書いている連作です。
新しい話から並べています。急がず、気になる話から、または第一話(いちばん下)から、お読みください。
続けられるかどうかは、容器を洗うタイミングひとつだったのかもしれない。
「無人で作ってくれる」という同じ役割を、家の中で二つの鍋が取り合っている。
面倒なのは作ることではなく、その少しの量を一つ洗う数分かもしれない。
面倒なのは搾ることではなく、飲み終わったあとの数分かもしれない。
持ち続けるか手放すか、年に一度の道具に揺れる気持ちの行き先を、観察してみます。
眠っているのは性能ではなく、買う前に思い描いた料理と段取りがずれただけかもしれない。
止まったのは性能ではなく、動かす前の手間と噛み合わなかっただけかもしれない。
押入れに入っていったのは、収納の地形と相性が合わなかっただけかもしれない。
残った家には、油と後片付けの段取りが先にあった。
レシピを開くという工程の、見過ごされる重さについて。
刻むより、洗うほうが面倒になる瞬間がある。
「焼きたてが好き」と「毎週焼きたい」は、別の動線。